深部静脈血栓症とエコノミークラス症候群|原因・症状・治療・予防まで

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2025.12.01 足の病気

深部静脈血栓症とエコノミークラス症候群|原因・症状・治療・予防まで

深部静脈血栓症ってなに?

― 知ることで、安心につながる ―

「足がむくんで痛い」「なんだか熱っぽい」──そんな症状が、実は命に関わる病気のサインかもしれません。

深部静脈血栓症(DVT)は、体の深い部分にある静脈に血のかたまり(血栓)ができてしまう病気です。特に脚の静脈にできることが多く、放っておくと血栓が肺に流れてしまい、肺塞栓症という重篤な状態を引き起こすこともあります。
飛行機でよく知られるエコノミークラス症候群もその一つです。

でも、心配しすぎないでください。
今回は、DVTについて「知っておきたいこと」「気をつけたいこと」「前向きに暮らすためのヒント」を、やさしく丁寧にお伝えしていきます。

病気の名前を聞くだけで不安になる方もいるかもしれません。だからこそ、正しい知識を持つことが、安心への第一歩です。

深部静脈血栓症ってどんな病気?

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深部静脈血栓症(DVT:Deep Vein Thrombosis)は、脚の深い部分にある静脈に血栓(血のかたまり)ができて詰まってしまう病気です。特にふくらはぎや太もも、骨盤周辺の静脈に多く見られます。

皮膚のすぐ下を流れる「表在静脈」にできる血栓は比較的軽症で済むことが多いのに対し、「深部静脈」にできた血栓は肺に流れて詰まる危険性(肺塞栓症)があるため、より注意が必要です。

飛行機などで長時間座り続けた後に起こる『エコノミークラス症候群』も、実は深部静脈血栓症と肺塞栓症が組み合わさった状態です。つまり、深部静脈血栓症が原因となって起こる合併症のひとつなのです

深部静脈血栓症の症状は、片脚だけに起こることが多く、以下のような変化が見られます:

  • 脚の腫れ(特にふくらはぎや太もも)
  • ズキズキするような痛みや重だるさ
  • 皮膚の赤みや色の変化(暗赤色など)
  • 触ると熱を持っている感じ
  • 表面の血管が浮き出る

ただし、膝より下の血栓では無症状のこともあり、気づかないうちに進行するケースもあります。

なぜ危険なの?

血栓がはがれて血流に乗ると、肺の血管に詰まって「肺塞栓症(PE)」を引き起こすことがあります。これにより呼吸困難や胸の痛み、最悪の場合は命に関わることもあります。飛行機などで長時間座り続けた後に起こる「エコノミークラス症候群」も、深部静脈血栓症と肺塞栓症の組み合わせです。

深部静脈血栓症は、なぜ起こるの?原因とリスク要因

深部静脈血栓症(DVT)は、血液が静脈の中で固まり、血栓となってしまうことで起こります。では、なぜ血液が固まってしまうのでしょうか?その背景には、いくつかの要因が関係しています。

深部静脈血栓症(DVT)の発症には、以下の3つの要因が関係するとされています:

①血流の停滞

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  • 長時間の座りっぱなし(飛行機・バス・デスクワークなど)
  • 手術後や病気による寝たきり状態
  • 下肢の麻痺やギプス固定

②血管の損傷

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  • 手術や外傷による静脈の傷
  • カテーテル挿入などの医療処置
  • 炎症や感染による血管壁の障害

③血液の凝固傾向(固まりやすさ)

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  • がんや自己免疫疾患
  • 妊娠・出産・経口避妊薬の使用
  • 遺伝的な凝固異常(例:プロテインC欠損)
  • 高齢・肥満・喫煙・脱水

以下のような状況や体質の方は、深部静脈血栓症を発症しやすいとされています:

  • 長時間の移動(飛行機・新幹線など)
  • 手術後・入院中の安静
  • がんの治療中
  • 妊娠中・産後
  • 高齢者
  • 肥満・喫煙者
  • 過去に深部静脈血栓症や肺塞栓症を経験した人
  • 遺伝的な血液凝固異常がある人

深部静脈血栓症の予防のヒント

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リスクがある方は、以下のような予防策が有効です:

  • こまめに足を動かす(つま先を上下に動かすだけでも効果あり)
  • 水分をしっかりとる(脱水を防ぐ)
  • 圧迫ストッキングの着用(医師の指示に従って)
  • 長時間座るときは、1時間に1回は立ち上がる

どうやって見つけるの?診断方法

深部静脈血栓症(DVT)は見た目だけでは判断が難しいこともあり、医師による診察と複数の検査を組み合わせて診断します。
診断には、主に「身体診察」「血液検査」「超音波検査」「造影CT検査」が用いられます。症状が乏しい場合もあるため、検査による確認が重要です。

1. 身体診察

脚の腫れや痛み、皮膚の色の変化などを確認します。

有名な所見:

  • ホーマンズ徴候:足首を反らせるとふくらはぎに痛み
  • ローエンベルグ徴候:血圧計でふくらはぎを圧迫すると痛み

※ただし、膝より下の血栓では症状が出にくく、診察だけでは分からないこともあります。

2. 血液検査

血栓があると、Dダイマーという物質が血液中に増加します。Dダイマーが正常であれば、深部静脈血栓症の可能性は低くなります。
ただし、他の病気でも上昇するため、単独では診断確定できません。

3. 下肢静脈超音波検査(エコー)

最も広く使われる検査で、静脈内の血流や血栓の有無を確認します。
非侵襲的で痛みもなく、外来で短時間で検査が可能です。
鼠径部より上の血栓は見えにくいため、CTが必要な場合もあります。

4. 造影CT検査

静脈に造影剤を入れて、血栓の位置や大きさを高精度で確認できます。
特に骨盤や腹部の深部静脈の評価に有効です。造影CT検査が必要な場合は、CT検査のできる医療機関へ紹介させていただきます。

深部静脈血栓症の治療法とその目的

― 血栓を広げない、肺に飛ばさない ―

深部静脈血栓症(DVT)の治療は、すでにできてしまった血栓を「完全に取り除く」ことよりも、血栓が広がるのを防ぎ、肺に流れてしまうのを防ぐことが主な目的です。治療によって血流を保ち、症状を軽減し、再発を防ぐことが目指されます。

1. 抗凝固療法(血液をサラサラにする薬)

血液を固まりにくくする薬を使って、血栓が大きくなるのを防ぐ方法です。代表的な薬には、昔から使われている「ワルファリン」や、最近よく使われる「DOAC(直接作用型経口抗凝固薬)」があります。これらの薬は、血液をサラサラに保つことで、血栓の拡大や新たな血栓の形成を防ぎます。治療期間は数ヶ月から半年ほどが一般的ですが、再発のリスクが高い場合は長期にわたることもあります。

2. 圧迫療法(弾性ストッキング)

症状の軽減や再発予防に役立つのが「圧迫療法」です。これは、弾性ストッキング(圧迫ストッキング)を着用することで、足の静脈に適度な圧力をかけ、血流を促進する方法です。これにより、むくみや痛みが軽減され、血栓ができにくい環境を整えることができます。ストッキングの種類や圧力は診察の上でご提案します。

3. 血栓溶解療法(重症例のみ)

重症の場合には、「血栓溶解療法」が検討されることもあります。これは、カテーテルという細い管を使って血栓のある部分に直接薬を届け、血栓を溶かす治療です。肺塞栓症を起こしている場合や、脚の血流が著しく障害されている場合などに行われます。ただし、出血のリスクが高いため、専門設備を備えた病院での治療となりますのでご紹介させていただきます。

4. 下大静脈フィルター(IVCフィルター)

さらに、肺塞栓症のリスクが非常に高い場合には、「下大静脈フィルター(IVCフィルター)」という器具を静脈内に設置する治療が行われることもあります。これは、血栓が肺に流れてしまうのを物理的に防ぐためのフィルターで、一時的な措置として使われることが多いものですが、この治療も設備の整った病院での治療となります。

深部静脈血栓症の再発予防と生活の工夫

― 小さな習慣が、安心につながる ―

深部静脈血栓症(DVT)は、治療後も再発の可能性がある病気です。だからこそ、日々の生活の中でできる予防策を知っておくことが、安心して暮らすための大切な一歩になります。

まず大切なのは、「血流を滞らせないこと」です。長時間同じ姿勢でいると、血液が脚にたまりやすくなり、血栓ができるリスクが高まります。デスクワークや旅行などで座りっぱなしになる場面では、1時間に1回は立ち上がって足を動かすようにしましょう。つま先を上下に動かすだけでも、ふくらはぎの筋肉がポンプのように働いて血流を促してくれます。

水分補給も大切です。脱水状態になると血液が濃くなり、固まりやすくなります。特に夏場や運動時、飛行機など乾燥した環境では、こまめな水分補給を心がけましょう。
医師から処方された抗凝固薬を服用している場合は、自己判断で中断せず、指示通りに続けることが重要です。薬の種類によっては、食事や他の薬との相互作用があるため、定期的に通院していただいて確認することが安心につながります。

また、弾性ストッキング(圧迫ストッキング)を正しく使うことも予防に役立ちます。朝起きてすぐに着用し、夜寝る前に外すのが基本です。サイズや圧力は医師の指示に従い、無理なく続けられるようにしましょう。

生活習慣の見直しも効果的です。肥満や喫煙は深部静脈血栓症のリスクを高めるため、バランスの良い食事や適度な運動、禁煙に取り組むことが再発予防につながります。

最後に、不安なことがあれば、遠慮せず医師や看護師に相談すること。病気と向き合うことは、ひとりで抱え込む必要はありません。支えてくれる人や情報を味方にしながら、前向きな生活を続けていきましょう。

深部静脈血栓症は、放置すると肺塞栓症やエコノミークラス症候群などの合併症を招く恐れがあるため、日頃から予防を心がけ、気になる症状があれば当院へご相談ください。

よくある不安とその答え

病気の名前を聞くだけで不安になる方も多い深部静脈血栓症。治療中や治療後に、患者さんがよく抱く疑問や心配ごとに、やさしくお答えします。

Q1:また再発するんじゃないかと心配です...

その気持ちはとても自然です。深部静脈血栓症は再発することもありますが、予防策を知って実践することでリスクを大きく減らすことができます。
定期的な通院、薬の継続、圧迫ストッキングの使用、そして日常のちょっとした工夫(こまめに足を動かす、水分補給など)が、再発予防につながります。

Q2:薬は一生飲み続けないといけないの?

多くの場合、抗凝固薬の服用は数ヶ月〜半年程度です。ただし、血栓ができやすい体質や再発歴がある方は、医師の判断で長期服用になることもあります。
「いつまで飲むか」は人それぞれなので、相談しながら安心できる治療計画を立てましょう。

Q3:旅行や運動はしても大丈夫ですか?

基本的には可能です。ただし、長時間の移動(飛行機・バスなど)では、足を動かす工夫や圧迫ストッキングの着用が推奨されます。
運動も、無理のない範囲で血流を促すウォーキングなどはむしろ予防に役立ちます。

筆者情報

  • 兵頭内科眼科・ハートクリニック
  • 院長:兵頭 永一(ひょうどう えいいち)
  • 1998年3月大阪市立大学医学部卒業

資格・専門医資格

  • 日本循環器学学会認定 循環器専門医
  • 日本内科学会認定 認定内科医・総合内科専門医
  • 日本超音波医学会認定 超音波専門医
  • 日本脈管学会認定 脈管専門医
  • 下肢静脈瘤血管内焼灼術実施・管理委員会認定 血管内レーザー焼灼術実施医・指導医
  • 日本心エコー図学会認定心エコー図専門医
  • 身体障害者福祉法指定医(心臓)
  • 医学博士

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