心房細動とは?不整脈の中でも特に注意すべき理由

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2025.11.04 循環器の病気

心房細動とは?不整脈の中でも特に注意すべき理由

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「不整脈」と聞くと、心臓が一時的にドキドキしたり、脈が飛んだりするイメージを持つ方が多いかもしれません。しかし、その中でも「心房細動(しんぼうさいどう)」は、命に関わる重大な疾患です。

心房細動は、心臓の上部にある「心房」が不規則に震えることで、血液がうまく送り出されなくなる状態。これにより、血液が心房内に滞り、血栓(血のかたまり)ができやすくなります。この血栓が脳に飛ぶと「脳梗塞」、心臓に飛ぶと「心不全」など、重篤な合併症を引き起こす可能性があります。

しかも、心房細動は「自覚症状がない」まま進行することも多く、気づいたときにはすでにリスクが高まっているケースも。だからこそ、早期発見と正しい理解が何よりも大切なのです。

不整脈(心房細動)の主な症状は?

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心房細動の症状は人によって異なりますが、代表的なものは以下の通りです:

  • 動悸(ドキドキする感じ)
  • 息切れ
  • めまい・ふらつき
  • 疲れやすい
  • 胸の違和感

しかし、約3割以上の人は「無症状」であるとも言われています。これが「隠れ心房細動」と呼ばれる理由です。

「隠れ心房細動」のセルフチェック

  • 最近、階段を上るだけで息切れする
  • 急に脈が乱れることがある
  • スマートウォッチで心拍数が異常に高い/低いと表示される

もし当てはまる項目があれば、心電図検査をおすすめします。
尼崎市塚口の兵頭内科眼科・ハートクリニックでは日本循環器内科学会認定の循環器専門医の院長が心電図検査のほか、必要に応じてホルター心電図や心エコー検査を行い的確に診断いたしますのでご相談ください。

心房細動の原因とリスク要因

心房細動は、心臓の電気信号が乱れることで心房が細かく震え、正常な拍動ができなくなる状態です。では、なぜこのような異常が起こるのでしょうか?

加齢

心房細動は高齢者に多く、加齢による心臓組織の変化が関係しています。

高血圧

血管に負担がかかることで心房が拡張し、電気信号が乱れやすくなります。

心臓疾患

心不全・弁膜症・心筋症などの既往があると、心房細動のリスクが高まります。

甲状腺機能亢進症

ホルモン異常が心拍数に影響し、心房細動を引き起こすことがあります。

ストレス

交感神経が過剰に働くことで心拍が乱れやすくなります。

睡眠不足・睡眠時無呼吸症候群

酸素不足が心臓に負担をかけ、リズムが乱れる原因に。

過度な飲酒・喫煙

心臓の刺激性を高め、発作的な心房細動を誘発します。

肥満・糖尿病

代謝異常が心臓の構造や機能に影響を与えます。

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近年の研究では、家族に心房細動の既往がある場合、発症リスクが高まる可能性も示唆されています。遺伝だけでなく、生活習慣が似ていることも影響しているかもしれません。

不整脈(心房細動)リスクチェックリスト

以下の項目にいくつ当てはまるか、チェックしてみましょう。

基本的な健康状態

  • 年齢が65歳以上である
  • 高血圧の診断を受けている
  • 糖尿病がある、または境界型と診断されたことがある
  • 心臓病(心不全・弁膜症など)の既往がある
  • 甲状腺機能亢進症の診断歴がある

生活習慣・環境

  • 睡眠時無呼吸症候群と診断された、またはいびきがひどい
  • 最近ストレスが多く、心身の疲れを感じている
  • 飲酒量が多い(週に3回以上、1回2杯以上)
  • 喫煙習慣がある
  • 運動不足を感じている(週に1回未満の運動)

自覚症状・体調の変化

  • 動悸を感じることがある(突然ドキドキする)
  • 息切れしやすくなった(階段や坂道で特に)
  • めまいやふらつきが増えた
  • 疲れやすくなった、以前より体力が落ちた
  • スマートウォッチなどで心拍数の異常を指摘されたことがある
0〜3項目

現時点ではリスクは低めですが、定期的な健康チェックをおすすめします。

4〜7項目

中等度のリスク。心電図検査や医師への相談を検討しましょう。

8項目以上

高リスク。早めに医療機関での検査を受けることを強くおすすめします。

心房細動の検査、診断の流れ

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チェックリストのチェックが多い場合、まずはご自身でチェックしてみましょう。
自分で手首の脈を15秒ほど測定し、リズムが不規則かどうかを確認し、脈が「トン・トン・トン」ではなく「ト・トン・・トン・ト・ト・トン」のようにバラつく場合は要注意です。スマートウォッチなどの心拍モニターも有効です。

不整脈(心房細動)は、症状があってもなくても進行する可能性があるため、「気づくこと」が何よりも重要です。

症状が軽いからといって安心せず、動悸や息切れ、めまいなどの違和感が続く場合は、早めに医療機関を受診することが大切です。尼崎市の方や塚口周辺にお勤めの方は、当院を受診してご相談ください。

特に高齢者や高血圧・糖尿病などの持病がある方は、心房細動のリスクが高いため、健康診断など定期的に心電図検査を受けることが推奨されます。

また、心房細動は一時的に起こる「発作性」の場合もあり、通常の心電図では見逃されることがあります。そのため、症状が断続的な場合は、ホルター心電図で24時間記録することで診断できます。

通常の心電図検査のほか、必要に応じてホルター心電図・心エコー検査などを行ったうえで診断し、治療方針等について分かりやすくご説明いたします。

医療機関で行う不整脈の主な検査

心電図検査(心臓の電気信号を波形で記録)

最も基本的な検査。P波の消失や不規則なR-R間隔で心房細動を診断します。

ホルター心電図検査(24時間心電図を記録)

身体に小型の心電図をつけて24時間日常生活中の心電図の記録をすることで発作性心房細動など、短時間の不整脈も検出可能です。

心エコー検査(超音波で心臓の構造・血流を観察)

心房の拡張や血栓の有無を確認することができます。

心房細動の治療法と選択肢:薬か手術か、どう選ぶ?

心房細動の治療は、大きく分けて「薬物療法」と「手術療法(カテーテルアブレーション)」の2つがあります。症状の程度、年齢、合併症の有無などによって、最適な治療法は異なります。

心房細動の薬物療法

不整脈(心房細動)の治療において、薬物療法は多くの患者さんにとって最初の選択肢となります。症状の緩和や合併症の予防を目的として、複数の種類の治療薬が使われますが、服用にはいくつかの重要な注意点もあります。

主な治療薬の種類と目的

  • 抗不整脈薬(心拍のリズムを整える)・・・アミオダロン、ピルシカイニドなど
  • 抗凝固薬(血栓を防ぎ、脳梗塞を予防)・・・ワルファリン、DOAC(エリキュース、リクシアナなど)
  • 心拍数抑制薬(心拍数をコントロール)・・・β遮断薬、カルシウム拮抗薬

注意点

心房細動によって血栓ができやすくなるため、抗凝固薬(血液をサラサラにする薬)が処方されることが多くあります。これにより脳梗塞や心筋梗塞などの重大な合併症を予防できますが、出血のリスクが伴うため、定期的な血液検査や医師の指導が欠かせません。特に高齢者や胃腸に持病がある方は、慎重な管理が必要です。

また、心拍の乱れを整えるために使われる抗不整脈薬は、効果が高い一方で、まれに別の不整脈を引き起こすことがあります。服用開始後は、心電図などで心臓の状態を定期的に確認することが大切です。
さらに、心拍数を抑えるβ遮断薬やカルシウム拮抗薬は、息切れや倦怠感などの副作用が出ることもあります。日常生活で「なんとなく調子が悪い」と感じたらすぐに相談してください。
薬物療法で処方する治療薬は「飲めば治る」ものではなく、継続的な服用と医師との連携が必要です。症状が落ち着いても、自己判断で中止すると再発や重症化のリスクが高まります。

手術で不整脈(心房細動)の根治を目指すアブレーション

治療薬による薬物療法では十分ではない場合、手術による治療も選択肢となります。手術による治療が必要な場合は、適切な連携病院へご紹介させていただきますのでご安心ください。
治療薬で症状が改善しない人や発作が頻繁に起こる人、脳梗塞リスクが高いが治療薬の副作用が強い人などが適応となってきます。

カテーテルアブレーションとは?

心房細動の原因となる「異常な電気信号の発生源」を、カテーテル(細い管)を使って心臓内から焼灼(しょうしゃく)する治療法です。これにより、心房細動の根本的な発生を抑えることができ、薬物療法では難しい「根治」を目指すことができます。

① 準備

局所麻酔または軽い全身麻酔を使用し、足の付け根(鼠径部)からカテーテルを挿入します。

② 電気マッピング

心臓内の電気信号をリアルタイムで解析し、心房細動の発生源(主に肺静脈周囲)を特定します。

③ 焼灼(アブレーション)

高周波(RF)または冷凍(クライオ)で異常部位を焼灼、電気信号の通り道を遮断し、再発を防止します。

④ 終了・経過観察

治療時間は2〜4時間程度で、数日間の入院で経過を観察します。

心房細動の手術(アブレーション)の費用

使用するカテーテルの本数や差額ベッド料など医療機関によっても異なりますが、検査・手術、入院費用なども含めると、健康保険3割負担の人で概ね30~60万程度になりますが、高額療養費制度を使うことで月の自己負担額が約10万円前後に抑えられるケースもあります。
さらに、民間の医療保険に加入されている場合は、手術一時金や入院給付金を受け取ることができる可能性があるので給付対象か保険会社に確認しておくようにしましょう。

心房細動の生活習慣と予防:今日からできること

不整脈(心房細動)は、加齢や体質だけでなく、日々の生活習慣が大きく関係しています。再発や悪化を防ぐためには、薬や治療だけでなく「暮らし方の見直し」がとても重要です。

食生活の改善

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  • 塩分を控える:高血圧予防のために減塩を意識しましょう
  • 野菜・果物を多く摂る:カリウムや食物繊維が心臓にやさしい
  • 脂質の質に注意:飽和脂肪酸(揚げ物・加工肉)より、オメガ3脂肪酸(青魚・亜麻仁油)を摂るように心がけましょう
  • アルコールは控えめに:飲酒は心房細動の発作を誘発することがあります

適度な運動習慣

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  •  ウォーキングや軽いジョギング:週3〜5回、30分程度が理想です
  • ヨガやストレッチ:副交感神経を整え、心拍の安定に効果的です
  • 激しい運動は避ける:無理な筋トレや高強度のスポーツは逆効果になることも

睡眠とストレス管理

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  • 睡眠時間は6〜8時間を確保:睡眠不足は心拍リズムに悪影響します
  • 睡眠時無呼吸症候群のチェック:いびきがひどい人は要注意です
  • ストレスを溜めない工夫:趣味・瞑想・自然とのふれあいなどで心を整えましょう

禁煙と節酒

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  • 喫煙は血管収縮・酸素不足が原因で心房細動のリスクを高めるます
  • アルコールは週2回以下・1回1杯程度に:飲みすぎは発作の引き金になります

生活習慣とは別に年1回は健康診断などで心電図検査を受けるようにしましょう。特に特に高血圧・糖尿病・高齢者はリスクが高いので必須です。
スマートウォッチや心拍アプリを活用することで異常を早期にキャッチできる可能性がありますので利用を検討してみてください。

筆者情報

  • 兵頭内科眼科・ハートクリニック
  • 院長:兵頭 永一(ひょうどう えいいち)
  • 1998年3月大阪市立大学医学部卒業

資格・専門医資格

  • 日本循環器学学会認定 循環器専門医
  • 日本内科学会認定 認定内科医・総合内科専門医
  • 日本超音波医学会認定 超音波専門医
  • 日本脈管学会認定 脈管専門医
  • 下肢静脈瘤血管内焼灼術実施・管理委員会認定 血管内レーザー焼灼術実施医・指導医
  • 日本心エコー図学会認定心エコー図専門医
  • 身体障害者福祉法指定医(心臓)
  • 医学博士

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